「数字は見てる。でも、今週うまくいってるのか分からない」
Tomoya先に答えます。
最初に見る指標は、今週いちばん危ない問いに答え、変わったら手を変える数字を、
1つだけ選ぶことです。
総PVのように、気分は上がっても次の一手が決まらない数字は主にしません。
横断で「最初の1指標」を決める公式はありません。いちばん近いのは、Lean Analytics の One Metric That Matters(OMTM)、つまり「その時点で最優先の1指標」という考え方です。この記事は、それをソロ向けの手順にしたものです。
読む時間は約8分です。ダッシュボードの全部入り設定やGA4の手順は扱わず、定義・選び方・罠に絞ります。
ポイントは次の3つです
- 良い指標は、率や比率で、比べられて、単純で、答えによって行動が変わる数字です。
- 選び方は、問いを1文書く→答える指標を1つ選ぶ→変わったときの手を先に決める、の順です。
- 総PVなどのバニティメトリクスは主にせず、「控え」に置きます。
Tomoyaよく聞かれる点を、先に表にします。
| よくある質問 | 答え |
|---|---|
| 最初に見る数字はどれ? | 今週いちばん危ない問いに答え、変わったら手を変える数字を1つです |
| 指標が多すぎるときは? | 主は1つ。他は控えに置き、問いが変わったら入れ替えます |
| PVだけで判断していい? | 様子見には使えても、主な判断には使いません(次の一手が決まらないため) |
「良い指標」の定義。4つの条件で見分ける
Tomoyaソロは「作る・直す・発信する」を一人で抱えるので、数字が増えるほど安心したくなります。
でも、安心と次の一手は別物です。
良い指標とは、いまいちばん危ないリスクに答え、数字が変わったら自分の手を変える数字です。
Lean Analytics は、良い指標の目安を次のように置いています(要約)。
| 条件 | 意味 | 個人開発での例 |
|---|---|---|
| 率・比率 | 累計の数より、割合や1日あたりの数 | 登録した人のうち、翌日も使った割合 |
| 比べられる | 先週や、施策の前後と比べて読める | 先週の同じ指標と比べる |
| 単純 | ゴルフのハンデくらい単純。覚えて話せないと使われない | ひと言で自分に説明できる |
| 答えで行動が変わる | 結果によって手を変える。変え方はデータを取る前に決めておく | 「低ければ初回画面を直す」と先に書く |
わかりやすく言うと、スコアボードではなく、ハンドルです。
数字を見て曲がれるか、が分かれ目になります。
Eric Ries は、起業家が集めるべき指標は意思決定に役立つものだけだ、と書いています。
気分は良くなるのに、何をすべきか示さない数字がバニティメトリクス(虚栄の指標)です。仮説を確かめたり否定したりして手を変えられる数字は、行動につながる指標と呼んで分けています。
The Lean Startup の方法論でも、測る段階では原因と結果を示せる指標が必要で、進み具合の単位は検証された学びだとされます。ここでは「指標と学びの関係」だけ押さえておけば十分です。
定義の直後に、短い具体例を置きます。
- 今週の問い:「新しく登録した人が、翌日に戻ってこないのでは?」
- 選ぶ指標:新規登録のうち、翌日に1回以上使った割合
- 数字が低かったらやること:初回画面の導線を1か所直す
- 数字が高かったらやること:同じ導線を他の画面にも広げるか、次の問いへ移る
「総登録数」だけだと、増えても減っても何を直すかが決まりにくいです。翌日の利用割合なら、直す場所が浮かびます。
良い指標かのチェック
- 今週いちばん危ない問いに答えるか
- 率・比率、または比べられる形か
- 答えが出たら、先に決めた手が動くか
- 自分ひとりで毎週言えるくらい単純か
まだプロダクトが小さく、登録が週に数件でも構いません。件数の大きさより、「問い→数字→手」が一本でつながっているかが先です。
Tomoya試しに、いま見ている数字を1つ思い浮かべて、「下がったら何を直すか」を1行で言えるか確かめてみてください。
言えなければ、その数字はまだ主指標向きではありません。
今週見る指標を1つに選ぶ。問い→指標→手の手順

Tomoya永久に1指標、という意味ではありません。
Lean Analytics の OMTM も、「思いついた日から会社を売る日まで同じ1つ」ではなく、ある時点で最優先は1つ、と説明しています。選ぶときの軸は、事業の種類・成長の段階・誰に見せる数字か、の3つです。
さらに「いちばん壊れている指標が、いま一番大事」という見方もあります。1か所を集中して改善すると、次に弱いところが見えてくる、という考え方です(出典ではスクイーズトイ、握ると別の所がふくらむおもちゃにたとえています)。
ソロなら、教科書の型を全部覚える必要はありません。次の短い手順で足ります。
手順(問い1つ→指標1つ)
- 今週いちばん危ない問いを1文で書く
例:「作った機能を、誰も使っていないのでは?」 - その問いに答える数字を1つだけ選ぶ
例:その機能の週ごとの利用割合(対象ユーザーのうち使った人の割合) - 数字が変わったときの手を、先に1つ決める
例:低ければ導線を直す/高ければ次の問いへ - 主指標以外は「控え」にする
見ない、ではありません。今週の判断材料にしない、という意味です。 - 来週、問いが変わったら指標も変えてよい
段階が進めば、最優先も移ります。
| 今週の問い(例) | 選ぶ指標(例) | 変わったらやること(先に決める) |
|---|---|---|
| 人が来ていない? | 主な入口からの到達数(先週比) | 発信か入口を1つ変える |
| 来ても離脱している? | 初回の完了率 | 初回のつまずきを1か所直す |
| 使われない機能がある? | その機能の利用割合 | 導線か説明を直す/思い切って隠す |
| 戻ってこない? | 翌日または7日後の再利用割合 | リマインドか、価値の見せ方を変える |
KPI(重要業績評価指標)という言葉を使うなら、ソロの今週のKPIは「全部の成績表」ではなく、いまの詰まりどころ用の1本だと捉えると迷いが減ります。
具体例をもう1つ
今週の問いが「説明文を読んでも試してもらえない」なら、指標は「説明まで来た人のうち、試用ボタンを押した割合」で足ります。この週は、記事の総PVやSNSのいいね合計は控えです。
数字が低ければ、説明の一文を直します。高ければ、試したあと使い続けてくれるか、という次の問いに移ります。
| 条件 | 行動 |
|---|---|
| 指標の候補が3つ以上ある | 今週の問いに直接答えないものを外し、残った1つだけを主にする |
| 数字を見ても手が思い浮かばない | その数字は主指標から外す(バニティの可能性がある) |
| 先週と同じ問いで、数字が落ち着いた | 次に壊れている問いへ移り、指標を入れ替える |
週の頭に「今週やる/やらない」を決める型は、別記事にまとめています。主指標を決めたら、その表の候補の理由欄に書いておくと迷いが減ります。

罠。バニティメトリクスを主にしない

バニティメトリクスは、気分は良いのに、次の一手が分からない数字です。
Ries は、いちばん基本的なレポートである総ヒット数を例に挙げます。「1万ヒットあった。で、次は?」に答えられないなら、主指標には向きません。
| よく見る数字 | 主にしてよいか | 理由 |
|---|---|---|
| 総PV・総ヒット数 | 原則、主にしない | 増えた原因と次の一手が結びつきにくい |
| 累計の登録数(文脈なし) | 主にしないことが多い | 質や再利用が見えない |
| いいね数の伸びだけ | 主にしないことが多い | プロダクトの仮説を確かめることに直結しにくい |
| 施策の前後の完了率 | 主にしやすい | 仮説が当たったか外れたかで、手が変わる |
| 新規の翌日利用割合 | 主にしやすい | 人の行動に近く、次の改善点が見える |
Ries の要点を、ソロ向けに3つだけ持ち帰りましょう。
- 大事なものだけ測る
指標は多いほど良い、ではありません。問題に気づき、向きを決めるには、できるだけ少ない指標で足ります。 - 指標の向こうには人がいる
合計の数だけでなく、誰の行動かを意識します。数字の意味が分からなければ、その人に直接聞きます。 - 最終的な行動を見る
ボタンのクリック率のような途中の数字に気を取られず、購入・継続など、自分の「成功」に近い行動を見ます。
Lean Analytics も、指標を壁に投げつけてどれかが当たるのを待つより、集中しすぎるリスクを取るほうがましだ、と書いています。
ソロならなおさら、主指標は1つに絞ったほうが、手が散りません。
バニティメトリクスが無意味なわけではありません。雰囲気や勢いの参考にはなります。
問題は、それを今週の主な判断に使ってしまうことです。
| 条件 | 行動 |
|---|---|
| 数字を見て、次の一手が言える | 主指標の候補に残す |
| 「増えてうれしい」で終わる | 控えに移す(見るなら週1回ながめる程度) |
使っている計測画面のメモに、主指標1つだけ「主」と書き、他の数字には「控え」と書いてみてください。毎日見る場所が1か所に減ります。
今週の問いが「お金を払う人はいるのか」なら、指標の前に、課金の入口を用意する必要があります。

ここで迷いやすい点
- 主指標を永久に固定しない(問いが変わったら入れ替えてよい)
- 控えの数字を見ること自体は禁止しない(今週の判断に使わないだけ)
- 登録が少なくても始めてよい(件数より、問い→数字→手のつながり)
- 万能の指標を探さない(横断の単一の公式はない。あるのは、いまの問いに対する一時的な最優先)
まとめと次の行動
- 良い指標=いまのリスクに答え、変わったら手を変える数字(率・比率だと扱いやすい)
- 選び方=今週の問いを1つ→答える指標を1つ。段階が進めば変えてよい
- 罠=総PVなど、気分だけの数字を主にしない。少なく測り、人の行動で選ぶ
- 「最初の1指標」の単一の公式はない。問い1つ→指標1つは、ソロ向けの組み立て
数字を増やすほど安心したくなる気持ちは自然です。それでも、今週進むために必要なのは、スコアの山ではなく、曲がれるハンドル1本です。
次の行動は2つです。
Go1:メモに「今週いちばん危ない問い」を1文、それに答える指標を1つ書く。
Go2:低かったとき・高かったときの手を1行ずつ先に書き、他の数字に「控え」と付ける。
※本記事は、Lean Analytics の OMTM の解説、Eric Ries のバニティメトリクスに関する記事、The Lean Startup の方法論ページに基づきます。「問い1つ→指標1つ」の手順は、それらをソロ向けに組み立てたものです。

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